第5章 005
打つ手無し…
翔太郎も健太も、そして大野もガックリと肩を落とした。
「中から開けられない、外からも開けられないとなったら、俺らこのままここで…?」
その場にいる誰もが一瞬は考えた、想像したくもない現実を、翔太郎がサラッと口にする。
そして健太も…
「あの死体と一緒に…か?」
「え、そ、それは…、俺も流石に嫌かも…。ねぇ?」
翔太郎が顔を青くして大野を見るが、大野は翔太郎とは真逆の、赤い顔をしていて…
「そ、そう…だよね、“元”恋人だもんね…。嫌なわけないよ…ね?」
「ま、まあ…、そうですね…」
「あ、あんたはそうでも、俺はゴメンだね。死体と一緒にいるなんて…。考えただけでも気味が悪ぃ…
照れたように顔を赤く染め、頭をポリポリと掻く大野の横で、健太は不満そうに口を尖らせた。
その時、
「そうだ! その手があったじゃないか!」
何かを思い出したのか、あるいは思いついたのか、鮫島がパンと手を叩いた。
そしてスーツの内ポケットに手を突っ込むと、自身のスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
それから数分後、何をどうしても開かなかったドアは、一人の男によっていとも簡単に開けられ、0号室には弘行の死体を含む五人と、鮫島の電話で駆けつけた謎の男が、一堂に会することとなった。
『005』ー完ー