第2章 002
翔太郎と同様、健太は手元にある写真と、信号待ちをする男を見比べた。
健太が持っているのは、翔太郎が持っている写真とは別角度で撮られた物だ。
「間違いない、写真の男だ」
「OK。じゃあ…、計画通りに頼むぜ?」
公園の先にいる翔太郎から、車で待つ健太に合図が送られる。
胸ポケットに引っ掛けたサングラスをかけるだけの仕草だが、二人が相談して決めた合図だ。
健太は翔太郎からの合図をきっかけに、一旦車から降りると、辺りに視線を配らせ、素早い動きで車の後部に回った。
ハッチバックを上げ、座席部分を跳ね上げた後の、ガランとした後部に乗り込み、用意してあったビニールテープを手にする。
そして、ともすれば暴走してしまいそうな心臓を落ち着けるため、一つ大きく深呼吸をすると、キュッと瞼を閉じ、耳を澄ませた。
すると、翔太郎ともう一人…、言い争うでもなく、話し声が聞こえて来て…
その声は徐々に近付いて来る。
健太は翔太郎と同様、サングラスをかけると、被っていたキャップを更に深く被り直し、同時に自分の頬を両手で思い切り叩いた。
「ビビってんじゃねぇぞ…」
自分に言い聞かせるように呟きながら…
『002』ー完ー