第2章 002

計画を実行に移す日が来た。

翔太郎は予め予約しておいたレンタカーを受け取り、健太との待ち合わせ場所へと向かった。

二人が落ち合う場所は、足が付くことを案じて、お互いの家から、なるべく離れた場所を選んだ。

ただ、健太はそれには反対だった。

いくら駆け出しとは言え、テレビに出ている以上、顔を知られている可能性が無いわけではない。

特に、小さい子供を連れた親子連れには、殊更注意を払って行動しなければならない。

擦れ違いざまに｢歌のおにいさんだ｣なんて声をかけられることがあれば、それだけで綿密に立てた筈の計画も崩れることになりかねないからだ。

翔太郎に比べて、テレビに出ている分、遥かに知名度のある健太にとってのリスクは大きかった。

尤も、元々考えの浅い翔太郎にしてみれば、健太の負うリスクのことなど、これっぽちもありはしないのだが…

翔太郎の頭にあるのは、数分後には確実に手に入る100万円と、健太には話していないが、誘拐が成功した際に振り込まれる成功報酬の100万円の使い道だけだ。

勿論、大半は積もり積もった借金の返済に回るが、それでも手元に残る金は、ヒーローショーや、健太の父親が経営する電気店でのバイトで一ヶ月で得る収入よりは遥かに多いのだから、翔太郎がそれ以外のことまで気が回らないのは、無理も無いことなのかもしれない。