第9章 009
「順を追ってお話ししましょう」
成瀬はスッと息を吸い込むと、それを一気に吐き出し、続けて咳払いを一つした。
「まず、11時頃ですか…。この部屋に最初に足を踏み入れたのは、貴方方で間違いありませんか?」
決して鋭くはない、でもどこか冷たさを感じる視線を向けられ、翔太郎と健太は顔を見合わせることなく、同時に頷いた。
「その時、部屋の中には、貴方方以外に誰かいましたか?」
「”いた”って言うか、ベッドで寝てる人はいたけど…」
嘘を言っているつもりはなかった。
二人が弘行の死体を発見した時は、当然のように弘行は生きているものだと思っていた。
それが一転、”死体”だと判明したのは、他でもない目覚めた直後の大野の一言があったからだ。
もしも大野が”死体”だなどと言わなければ、二人は早々に部屋から出るつもりだった。
尤も、どうしてだかドアがロックされた状態になり、それは叶わなかったが。
「おかしいですね。大野さんのお話では、大野さんが目を覚ました時には、既にお二人はこの部屋にいたことになりますが…」
「そ、それは…、その…、なんつーか…」
言い淀む翔太郎の横で、健太が溜息でも落とすように息を吐き出した。