第9章 009
「あのぉ…、一体どういうことなんすか?」
健太が頭を抱えてしまい、自身が感じた疑問に答えが得られなくなった翔太郎は、仕方なく榎本に回答を求めた。
「その電話って、あの死体…っつーか、弘行さんが持ってたんですよ…ね?」
「ええ、彼の尻ポケットに入っていましたが、それが何か?」
「いやさ、なんつーか…」
どう説明するべきか分からず、口篭ってしまう翔太郎に、
「焦ることはありませんので、思ったことを仰って下さい」
急かすでもなく先の言葉を促した。
「えっと、だから、実はさっき…」
そこまで言いかけて、やはり翔太郎は続く言葉を口にすることを躊躇ってしまう。
それもその筈、もし翔太郎が弘行からのメールを受け取っていたことを明かせば、その時点で大野を誘拐したことが知られてしまう。
そうなれば当然、翔太郎は勿論のこと、健太だってそれなりの罰を受けることになる。
(でも…)
意を決したのか、隣りに座る健太に「ごめん」とだけ言って、翔太郎はスッと息を吸い込んだ。
「俺、馬鹿だから上手く説明出来ないんだけどさ、さっきメールが送られて来たんだけど、その時はもう弘行さんは死んでたわけで…。てことはさ、誰がメールを?」
上手く纏まらない疑問を、翔太郎は思いつくまま口にした。