第7章 007
「なるほど。では、そのことを証明出来る人は…と言いたいところですが、廊下には防犯カメラも設置してあるようですし、後で確認すれば済むでしょう」
それ以上の追求を免れたことに、翔太郎も健太も、ホッと胸を撫で下ろす。
ただそれも束の間、成瀬が聞きたいのはそれだけじゃない。
すっかり安心しきっている翔太郎に、身体ごと視線を向けた成瀬は、コホンと小さく咳払いをすると、
「では次に、この部屋に入った時の状況をお聞きしましょう」
と切り出した。
二人は同時にゴクリと息を飲むと、視線を合わせ、コクリと頷いた。
「お二人がこの部屋に入った時、何か…そうですね、違和感と言うか…、いつもと違う点はありませんでしたか?」
言われて翔太郎は一瞬考え込むような素振りをするが、すぐに首を横に振った。
「気付かなかった…ということですか?」
「ま、まあ…、そういうことになる…かな…」
当然だ。
そもそも二人がこの部屋に入ったのは今日が初めてのことで、違和感や、以前との相違点を問われたところで、答えようがないのだから。
それは健太も同じことだ。
二人は注がれる視線から隠れるように、汗をたっぷりかいた手をグッと握りしめた。
少しでも動揺を気取られないよう、必死だった。