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徒花まみれの心臓 ~ifストーリー~

第7章 息をしたまま死ね




暴れないようにと釘を刺され、身体を抱き上げられる。お姫様抱っこなぞ人生で初めての経験だった。暴れるも何も、その気力が湧かない。今日だけだ。今日だけ、素直に運ばれてやろう。そう思って大人しく身体を預け目を瞑る。そう言えば、記憶にはないけれど、飲み会の時も運んでくれたのだったか。今日だけじゃないだろと自分にツッコミを入れつつ、息を吐く。


「藍染先生、私に貸し作って、なに企んではりますの、?」


「おや、酷い言い草だね」


くつりと笑みを零した際の振動が伝わってくる。


「…けど、そうだね。下心はある」


「したごころ、」


「こうして弱った君を独占できるだろう」


その声の甘さに、昼間の屋上での出来事を思い出して、体温が増す。


「……意味わからんわ、」


どうせ私を騙そうとして演技しているだけだ。その甘い声も、今までずっと私に構ってきたのだって、自分の本質に気付いた私を懐柔させるために違いない。恐ろしく頭が良く完璧主義なこの男ならやりかねない。わかっている。わかっているのに、今こうして甘えてしまっている私は、藍染先生に絆されてしまっているのだろうか。


「………たばこ、吸いたい」


ぽつりと漏らした言葉に、彼がぴたりと歩みを止める。


「それは、キスのおねだりかい?」


聞かなかったフリをして、その言葉に高鳴る心臓に気付かないフリをして。私は狸寝入りをするのだった。





息をしたまま死ね


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