第7章 息をしたまま死ね
「空座東高校から来ました、国語科の藍染惣右介です。よろしくお願いします」
女子生徒の黄色い悲鳴に包まれながら、親任式で堂々と挨拶をした男。私の隣に座っている保険医の乱菊もとい松本先生が、なかなか良い男じゃない、と私に同意を求めてくる。
「……私、あんま好みやないわ」
容姿端麗でスタイルも良く、スーツを着て真っ直ぐ立つ姿はモデルかと見間違うほど様になっている。低く響く諭すような声に、穏やかな微笑。成る程確かに多くの女性はああいう男が好きだろう。けれど。一目見た瞬間に、あまり関わりたくないタイプの人間だと思ってしまった。何故かは分からないが、その全てが作り物じみていて、彼そのものが見えない。怖そうな人だと思いながら見ていると、壇上に立っている彼がふとこちらを見る。目が合ったのはほんの一瞬。その一瞬で、やはり怖い人であると確信するには充分だった。---彼は、穏やかな瞳の奥で、ひどく冷たい色を乗せて、私を含む教員全員を観察していた。
「ほな、知っとる人の方が多いやろうけど自己紹介からやな。2年E組の担任なりました、市丸愛美いいます。担当科目は世界史。せやけど今年は現社と倫理も教えるかもわからん。1年間よろしゅう」
二年生ともなれば皆慣れていて、昨年度教えた生徒の姿もちらほら見かける。大体の生徒は私が担任であることに喜んでいた。ゆるいことで有名な私だ、それは生徒にとっては嬉しいだろう。そうして、係決めや委員会決め、今後の時間割等を話し合った後、だらけモードの生徒に現実を突きつける。
「あ、ちなみに、今日は出張で不在やけど。このクラスの副担、鬼の生徒指導部長として名高い砕蜂先生やからね。みんな気ィ引き締めやー 」