第8章 深いつながり
マリサイド 続き
サクラちゃんが出て行って、家の扉がしまったと同時に、ちょっと緊張したような沈黙が2人の間に流れる___
「マリ」
そう呼ばれて顔を上げた。
「今からはもう邪魔も入らないから。聞かせてくれる?俺も話したかったこと、全部話すから」
「うん…」
それからかかしとわたしは時間が許す限り話をした___
自分の世界のこと、かかしの世界のこと、5年前にみたかかしの血だらけだった姿の意味、彼の背負っているもの、忍びというもの、戦争、かかしの教え子たちのこと、今現在として起こっていること…
そこは全部、ぜんぶまるで本にあるような、まったく信じられない世界だった___
ここまで死を身近に感じて生きたことも、周りにそんな人がいたこともない。
5年前、なぜかかしが
「俺と一緒にいないほうがいい」
といって離れた理由も痛いほどわかった。
あれはまったくもって無知で純粋な私にたいする
辛くもかかしの優しさだった。
「マリ…大丈夫?」
そういって下を向いている私をみるかかし。
何も言えず、かかしを見つめるしかなかった。
だって…
だってこれからまたきっと何かが…戦争が起こる。
そこにかかしは最高戦力の一員の1人としていくのだから。
昔の人はなんて心が強かったのだろうか。
じいちゃんやばあちゃんは、ひいじいちゃん、ひいばあちゃんはどんな気持ちで戦争にいくことに覚悟を決め、またそれを見送っていったんだろう。
「…行かないで…」
両目からこぼれる涙は止めれなかった。
言いたいことはたくさんあるけど
思うようにうまく言葉が並べられない。
だからたった一言でいうなら…それに限る。
行かないでほしい、それが本心。
ここでの現実に
かかしに突き付けられているこれからに
私の心は追いつけず、それが体にまで伝わり震えていた。