第6章 すれ違う心
マリサイド 続き
「か、かし?」
支えられた体をたてなおし、お面越しにでもかかしを見ようとするけど、さっきの映像がフラッシュバックして顔をあげることができない。
「マリ?大丈夫か?」
声は前と変わらず優しいのに
なんで?…なんであんな姿で、あんなとこに立ってたの?
あれだけあった安心感が、あっけなくも恐怖と疑いのものへと変換される。
あの真っ赤な目で見られた感覚が蘇り、体が震える。
頑なに何も答えず、お面をはずさず、顔も見ようとしない私にかかしは何かに気づく。
「マリ、なにか…あった?」
その声は、ほんの少し震えてて動揺してる。
「…このお面…なに?かかし、何してたの?血が…倒れた人が‥いっぱい…見えた…」
それを言うとかかしは大きなため息をついた。
「マリ、お前…俺といないほうがいい…」
悲しそうにそういって、私を支えていた手がゆるみ、ぬくもりまでもが徐々に失われていく。
なんで?
そう聞きたいはずなのに
自分がみたあの映像とかかしの言葉が肯定されて
私もそれが一番いいのかもしれないとどこかで思っている。
体が動かない。
言葉がでてこない。
完全にかかしは私からはなれ
地面をお面越しに見つめる私の視界から
かかしの足元も消えていく_____
たった今までここにあったその気配がまったくなくなってしまった。
「…っ…」
自分でおもったこととは裏腹に、涙がとめどなく両目から流れだした。
何も聞かずに、彼の言葉にそれがいいかもしれないと思った自分が突然絶望的に嫌になった。
離れてなくなってしまったかかしの気配に、これほど悲しみを覚えるとは…
今の自分の心が痛いほど感じている。
お面をはずすと、なぜかそこはまだお祭りをしている場所で、階段の場所に立ち尽くす私は、その祭りの人々とは反対に一人泣きじゃくっていた______