【鬼灯の冷徹】あの世の行い気をつけて【トリップ長編】
第3章 地獄の沙汰も色次第?
「変ですね、どこも壊れていませんよ。本当に映像が乱れたりしたんですか?」
眼鏡をかけた作業着姿の獄卒が言う。先程から技術職の鬼を呼び出し浄玻璃の鏡に故障箇所がないか確認作業を行ってもらっていた。
「ええ、ですが故障がないと判ったのでもう結構です。有難う御座いました。」
鬼灯様がそう言うと「また何かあったら言って下さい」と声をかけて作業着姿の獄卒は部屋を出ていった。
「・・・どうしたものですかね。他の十王やその書記さん等にも問い合わせてみましたが貴方が地獄に落ちたという書類が見当たらりません。」
「書類不備ってのも鬼灯君が第一書記官になってから一度もないから違うだろうしねぇ。」
再び部屋に静寂が宿る。もうこんなやり取りは何度目になるのだろう。
「私、どうなるんだろ・・・」
亡者になったのならまだ納得いこう物にも、私が死んだという証拠がない。この状況に堪え切れず声を漏らす、と同時に深く息を吐いてこちらに近づいてきた彼は此処に来て初めて私の顔をはっきりと見据えて口を開いた
「貴方、義務教育は終えてますか。」
そんな質問が来ると思っていなかったので、一瞬間をおいた後に私は「はい」と答えた
「何か職業に勤めた事は。」
「…あります。」
まっすぐな目が私の瞳の奥を見てくる。緊張を通り越して涙が溢れてきそう!
「…わかりました。閻魔大王、今日付けで一人獄卒見習いを雇用します。構いませんね?」
余りにあっさりと告げる鬼灯様の奥で笑顔で頷く閻魔大王が見えた瞬間、今までで一番優しい表情で鬼灯様はこう言った。
「葎華、詳しい処遇が決まるまで私の下で働いてもらいます。しっかり仕事してください。」
「はいっ!」
こうして私神楽坂 葎華(暫定生者)はこの恐ろしくも愉快な地獄にて働く事が決まりました。
【続く】