第2章 生命尽きるまで
死ねる。
今度こそ。
大好きな人に愛されて。
愛する喜びも、愛される喜びも知った。
幸せも知れた。
だからあとはもう、解放されることだけだったのに。
「……ルゥの、嘘つき」
こんなの。
ひとりだけ、朧だけ残ったって。
余計辛いだけだ。
苦しいだけだ。
痛みから解放されたって。
苦しみから解放されたって。
朧には生きる場所さえないのに。
この先どーやって生きていけばいいのか。
『死』が、全てだったんだ。
死が、唯一苦しみから解き放たれる術だった。
彼がいないなら。
呪いから解放されても苦しみ続けるしかない。
「嘘など、つかない」
━━━━━━━え。
橋の欄干に立ち、川の流れに目をやっていた朧の後ろから聞こえたのは。
懐かしい声。
愛しい声。
ずっとずっと、焦がれた声。
「ずっと一緒だ。そう言ったろう?」
震える。
肩が。
身体が。
だけど。
どーしても振り向けない。
夢、なら?
もし夢なら、振り向いた瞬間覚めてしまう。
夢なら。
ずっと覚めないでいて欲しい。
振り向けない。
怖くて。
見たい、のに。
触れたい、のに。
怖くて振り向けない。
「〰️っ、ぅぅ」
駄目だ。
絶対、泣いちゃだめ。
消えちゃう。
覚めちゃう。
そんなの絶対駄目だ。
「朧」
「………っ」
優しく呼ばれる声に、握りしめて俯いていた顔を上げる朧。
それでもまだ肩を震わせこちらを見ようとしない朧に。
かれ、は。
いつもと変わらぬ様子で声をかけた。
「来い、朧」
「━━━━━━ルゥ……っ」
弾かれるように振り向いた、1年ぶりの愛する者の顔。
涙。
涙でぐしゃぐしゃにして。
それでも笑って駆け寄ってくる愛しい恋人を。
彼は。
両手を広げて、受け止めた。