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悪魔様の言うとおり

第2章 生命尽きるまで




『悪魔さま、私をお嫁さんにして下さいませ』




あの時の、悪魔さま。
探して探して。
何度も失敗して。
でもどーしても会いたくて。
あの時見せた、哀しそうな表情。
切なさを宿したあの瞳。
優しく笑いかかけてくれた、あの笑顔。





『母親の命を喰らう責任は、必ずとろう。朧、会いに来い。お前の願いは俺が必ず聞き入れてやる』






ずっとずっと、忘れられなかった。
幼い憧れに似た、感情だったのかもしれない。
だけど。
親を慕う、そんな小さな感情だったのかも。
だけど確かに恋だった。
ルシエルに出会って、それは確信へと変わっていったのだ。
ルシエル、が、ルゥとなって。
愛称で呼ぶのを言葉では嫌がっていても、朧はそれが本心じゃないことは気付いていた。
愛しい。
愛しい。
それは日を重ねる毎に、増えていった。
だけど。



『朧。人間との婚姻は、認められていない。朧の願いは、聞き入れられない』
『うん』

わかってた。
朧は、八神だ。
悪魔との婚姻は、不可能。
八神は、神の贄なのだから。


『なら朧を喰って』
『願いを叶えられないなら、それは出来ない』
『なら私を殺して。それだけ』
『………出来ない』



願いは、『死』。



それすらも朧には、望むことは許されていないのだ。
神の意思に反し、死は、あり得ない。





『………それなら』


死すらも叶わないなら。



『朧を、私を………愛して』







『その願い、聞き入れた』







ねぇ、ルゥ。
対価は。
私の命。
願いが叶った時、私をちゃんと殺して━━━。




苦しみを、終わらせて。










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