第41章 政宗 誕生日の噺ー中ー(R18)
…けれど、
一瞬、強く握られた腕、
一瞬見た、揺れた瞳。
それは、ただの欲望だけでなない事を表しているのだと思った。
『言いたい事、言っていいんだ』
『自由でいろ』
『弱くてもいい、心を開け』
『泣くのも、望むのも普通の事だ』
(心から…私が望む事をーー……)
今まで何度も、何度も、政宗は言っていた。
背中を押して、
傍で笑って待っていてくれた。
(でも、私は…まだ全部は言えないでいる…
政宗は、いつまで、待ってくれる?)
『お前の全部が欲しい』
それは
(私の心が政宗に寄り添ってないと感じているからじゃないの?
これ以上待てないと言う事じゃないの?)
『いつになったらお前の心が手に入る?』
『いつになったら、俺をーー…』
政宗がそう言ってた様に感じた。
(政宗、信頼してるよ。
頼る人は貴方しかいないよ。
傍にいたい、居て欲しい)
そう、思っているのに、
こんなに想っているのに。
言わずに、悔やんだ。
その後悔も言わずに飲み込んだ。
痛みも悲しみも楽しみも、言葉に出来ないまま、
飲み込んだ言葉や後悔、それは消化も浄化も出来ないまま、
沈んだまま何処かにやってしまった。
私はそうやって作られた。
それで、大切な人を煩わせる私。
情けなかった。
プライドとか、傷とか、
羞恥とか、そんなモノではなく、
無意識に言葉にする事を諦め、
セーブされているだけ。
(政宗が望んでるのは…私の全部…)
出会って間もないのに、真っ直ぐに、
心の奥を覗き、包み込もうとしてくれた人は他にいない。
(政宗がいなくなる以外、怖いものはないっ)
「…なれて…か、ないで……
…政宗好き…好き…大好きぃ…」
形振りなんて構っていられなくなった。
失くすくらいならーー……。
(私は、もうーー……っ)