第22章 謀(はかりごと)ー序ー
再び、瑠璃は信長と内裏の廊下を歩いていた。
内裏と言ってもこの度は離宮二条城だ。
将軍の二条城を焼いた後、誠仁親王の為に信長が建てさせた二条城。
「外は華やか内は陰隠」
「内裏と言いますから、内には裏が隠れているのでしょうね」
言葉には似合わぬほどの麗美な笑みの瑠璃が信長の後に続く。
この独特の雰囲気に緊張する者が多い中、
瑠璃はいつも通りに見えた。
「麝香(ジャコウ)の薫りには気をつけねばな」
「甘い薫りに虜になりますの?」
「そうならぬように」
後ろを政宗と光秀が静かについてきていた。
「明智殿」
「これは、誠仁親王様」
「私と蹴鞠をして遊びましょう」
「よろしいですよ。
お手柔らかにお願いつかまつります」
恭しく頭を下げると、庭に降りた。
紅桃色の花を抱え、
回廊を歩く女中が微笑ましげに親王を見ていた。
蹴鞠をしに集まって来た男たちは皆、
愉しげな笑みを唇に浮かべていた。