第10章 猜疑の船旅
出港の時、晴天だった。
けれど、瑠璃は船の欄干を握って、
独り遠くを眺めていた。
「お嬢、どうしたよ」
「!」
突然 頭上から降って来た声に、
弾かれたように身体を揺らす。
「元気ねぇじゃんか、何かあんなら言ってみろ」
頼り甲斐のある落ち着いて、
堂々とした張りのある元就の声。
「……」
じぃぃーーーっと元就を見つめる瑠璃。
快活な笑を浮かべたまま、元就も小首を傾げて瑠璃を見ている。
(悪っぽいけど、男らしい人だな…)
などと思いつつ、上目遣いで小さな声をだす。
(子ウサギみたいだ。喰ったろか…クク)
「…あの…船酔い、しない?」
(ん?船酔い?)