第9章 西国見聞録
瑠璃は賑わいに驚いて、先程からキョロキョロとしていた。
「瑠璃、堺は日ノ本屈指の貿易港だ」
瑠璃の様子に光秀は可笑しくて頬を緩める。
「…知ってはいましたが、これ程とは…」
この時代の堺の様子を始めて見た。
当たり前の反応だ。
「散策は後にするぞ」
「あ、はいっ!」
(珍しく好奇心が丸見えだ)
いつもより、元気よく、弾む声はワクワクとした気持ちの現れ。
「明日、嫌ってほど連れまわしてやろう」
「ふふふ…連れ回すのは私だと思いますけど〜?」
「お前のは、連れ回すのではなく、
振り回す、だろう」
2人で笑いながら、宿に荷を置いたのは、
日暮れの頃だった。