第15章 フォーミュラ
その後続いた第二回戦、轟対瀬呂の試合は規格外の威力で瀬呂あっという間に凍らせてしまった轟の圧勝。しかし観客席から見える小さい彼の背中はどうしてか、より一層に怒りと悲しみに満ちているように見えた。
(…轟くん?)
昼休みで交えた彼との会話の中で見せた、彼の苦しそうな目つきを思い出せばズキリと胸が小さく痛む。彼の心配をしつつも、時間は刻一刻と過ぎていく。
第三回戦の上鳴対塩崎の試合が始まると同時に横を見れば、いつの間にか先に降りて行ったであろう飯田はもう近くにはいなかった。
自分も覚悟を決めて席を経てば、
それに気づいた緑谷と麗日が声をかけてくる。
「もういくの?」
『うん、三回戦がどれだけ続くのかわからないけど余裕持った方がいいかと思って』
「そうだね…がんばって!」
「トバリちゃんがんば!ああ、でも飯田くんに悪いな…ふ、二人ともがんばって…!」
『あはは…ありがとう、がんばるね』
応援してくれた麗日と緑谷を残し、会場に繋がる廊下へと降りていく。
今まで誤魔化していた緊張が徐々に私に湧き上がってくれば、素早い鼓動の音が身体中に響く。
飯田には全力で挑むなんて言ってしまったが、実際のところ彼とまともに戦闘なんてすれば私の勝利は怪しい。スピードの早い相手と対戦するとなった時、正直私の個性は不利だ。
どんなに移動速度が私の方が早くても、あの逃げ足では彼を捕まえる前に逃げられてしまう。そしてもしもタイムラグの一瞬の隙を捕らえられ、あの騎馬戦の時に見た超高速技でも出されたら。
それはきっと私の負けを意味する。
(…だめだ。相手に捕まる前に、飯田くんの隙を見つけないと)
これは言わば先に相手の不意をついたものが勝つ、先手必勝の勝負。