第19章 デベロップメント
わいわいと楽しげに名前を決めていくみんなを横目に、私はこれでいいやとペンを下ろした。
「じゃあそろそろ、できた人から発表してね」
ホワイトボードを手渡されてからなんとなく予想はしていたが、やはり発表方式なのか。みんなの前で発表なんてあまり乗り気にはなれないが、これも授業だとしょうがなく諦める。
次々とみんなが可愛かったり独特だったりする名前を発表していく中、私も重い腰を上げてみんなの前へと立った。
しかし予想異常にみんなの視線が集まる事につい緊張してしまい、思わず視線をさげてしまう。さっさと終わらせたい一心で、面白くもなければ可愛げもない名前を口した。
『えっと…テレポーター、です』
ぎこちなくそう言えば、ミッドナイトが間入れずに顔を近づけてくる。
「あらかっこいいけど、そのまんまね?いいの?」
『特にこだわりがなくって』
「あらそうなの、じゃあもうちょっと工夫して…テレポータなんてどう?名前っぽくていいんじゃない?」
「いいじゃねえか!かっこいいぜテレポータ!」
「いいねいいね!」
「トバリちゃんらしくてかわいいわ」
『えっとーじゃあそれで』
「適当だな」
ミッドナイトとクラスのみんなに促されるまま新しいヒーロー名を承諾すれば、足速に席へと戻る。そのまま順調に進められていきながら、次々と名前を発表していく皆。
そんな中飯田の順番になれば、彼は視線を下げたまま自身の名前をヒーロー名として発表する。
あの日緑谷たちから彼の事情を聞いて以来、なんて声をかけていいのかわからず飯田とは未だ話せていない。そんな彼の様子を伺えば、やはりどこか暗く思いつめた表情をしていて、とても見ていられない。
(私に何か…できること…)
そう考えても私には気の利いた事一つ思い浮かばず、拳を握る。ヒーローを目指しているというのにこんな調子では、本当にやっていけるのだろうか。