第3章 リスタート
入学手続き、引っ越し、それにルーティーンの体力づくりと目まぐるしい日々に追われ、季節はすっかり春になっていた。
シワひとつない制服を纏い、生活感のない空の新居をあとにして私は学校へと向かう。
授業初日に遅れるわけにもいかない。
早起きして学校についたはいいがさすがはトップの雄英、校内の広さもトップクラスで教室ひとつ見つけるのも一苦労。どこもかしこも似たような大きな扉に長い廊下、正直全く違いがわからない。
(1-A...1-A...ど、どこだ…)
とりあえず標識を頼りに来たはいいものの、目的の教室はやっぱり見つかる様子もなく、仕方がなく目の前を歩く少々イカつめの見た目をした赤髪の男子生徒に駆け寄る。
『あの、すみません』
「ん?」
振り返る彼の顔をみると、見覚えのある赤い瞳がこちらを射抜いた。
「あー!!お前!」
『えっ』
「希里!希里トバリだよな!?実技入試の時の!?」
『……ああ、君は…』
鋭い歯で大きな笑顔を向ける彼、それは入試の時に助けてもらった切島鋭児郎。
どおりで既視感のある子だと思ったが、私が知っていた長めの黒髪から見事なツンツンヘアーへと変身を遂げており、少し、いやだいぶ印象が違っていた。
これはいわゆる高校デビュー、というやつか。
『切島くん、だよね。見た目ずいぶん変わったね』
「え!ああ、まあこれは色々な…。それよりもお互い受かってよかったぜ!これで本当に同じクラスメイトだったら熱いな!?」
『そうだね…切島くん、クラスは?』
「ああ俺は―」
「切島ァあったよ!1-Aの教室こっちー!」
切島君が言い終える前に、これまた明るい声色の女の子が奥の廊下から走ってくる。
どうやら切島くんの友達らしいピンク肌の彼女は、もう探したじゃんかー、と文句を垂らしながら私たちの前に駆け寄る。
「あれー!?切島、さっそくナンパしてんのー?」
「ち、ちげえよ!入試の時にあった知り合いだ!」
『こんにちは、希里トバリです。二人も1-A?』
「私芦戸三奈、よろしく!も、ってことは希里もー!?」
『う、うん、多分』
「一緒なのか!?本当に同じクラスか…!」