第17章 ダウト
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麗日と共に席につけば、すでに会場へは熱気に包まれていて。
あのNO2ヒーローエンデヴァーの息子の轟対、第一種目1位の緑谷の試合だからか、尋常じゃないほど観客たちが沸いている。
しかしその熱気と打って変わって、轟と緑谷の間にはどうにも緊迫した空気が漂っているように見える。
確か朝一番、轟が緑谷に宣戦布告してからどうやら轟が一方的に緑谷に執着しているらしい。
私にはその理由が一体なんなのか、知る由もない。
しかし、それでも彼らの間に流れる張り詰めた空気は私ですら妙に緊張してしまう。
そんなことを考えているうちに彼らの試合が始まれば、すぐさま氷結で攻撃を仕掛けていく轟。そして一方、彼の攻撃を指で生み出した風圧で一層していけば、規模の違う彼らの戦いは続いていく。
そのまま追い討ちをかけるように轟が氷結で緑谷との距離を縮めれば、大きく後ろへと押される緑谷。
(あのままじゃ押し出される…)
しかし今度はさっきのとは似つかない程の威力の風圧があたりを包めば、氷の山が崩れ散る。大きく後ろに飛ばされそうなりながら瞬時に自身の氷で壁を作れば、なんとか体勢を立て直す轟に、皆ど肝を抜かれる。
「もうそこらのプロ以上だ…」
「さすがはナンバーツーの息子って感じだあ」
その規格外の強さに圧倒される会場はまた今までとは違ったざわめきで包まれていく。そんな中私も思わず固唾を飲めば、今度はとどめと言わんばかりによろめく緑谷に氷結が襲う。
(何か言っている…?)
緑谷の口が動いたかと思えば、瞬く間に強い衝撃と風圧が轟の氷を再び散らし彼を押しのけた。
風圧が静まりなんとか緑谷を見下ろせば、彼の腕と指が尋常じゃない程赤く腫れ上がってるのが見える。普通ではない戦い方をする緑谷に、思わず手が震え始める。
しばらく何かを話している様子の二人、しかしすぐさま緑谷に向かって走り出す轟に遮られるその空気。
(轟くん…動きが鈍くなってる…)