第2章 不言色 ―いわぬいろ―
「ど、ど、ど、どうしたのっ!?」
びっくりして。
思わず口の中のを飲み込んじゃった!
うぇぇぇ、まずっ!
…って、今はそんなことどうでもよくて!
「ちょっと、え、なにっ!?なんか、嫌だった!?」
慌てて顔を覗き込んだら、両手で隠してしまった。
えーっ!?
まさか…俺がヘタすぎて嫌だったとか!?
俺、フェラには結構自信あるんだけどなぁ~?
いやでも、フェラっていうか…ただ咥えただけで、出ちゃったし…
なにがいけなかったんだろうと、グルグル考えてる間も、ニノは泣き止む気配はなくて。
それどころか、ますますしゃくりあげて泣き出しちゃって。
「あの~…なんか、ごめんね?」
どうしたらいいのかわかんなくなった俺は、ベッドの上に正座して、頭を下げた。
「ひっく…ごめ…ひっ…ちが、う…」
両手で顔を隠したまま、ニノが首を振る。
「ちが…相葉さん、は…悪くない、から…俺が…俺の、問題だから…」
胸が苦しくなるような切ない声で、そう言った。
俺のとこに電話してくる人は
みんななにかを抱えてる
仕事のこと
恋人のこと
家族のこと
みんなそれぞれにツラいことやしんどいことを抱えてて
ひとときの安らぎを俺に求める
君も、そうでしょう…?
俺は、声を殺して泣き続けるニノの隣に寝転ぶと。
包み込むようにそっと、抱き寄せた。
「…っ…相葉、さ…」
「今日は…こうやって、寝よ?」
「っ…でもっ…」
「心配しなくても、料金は半額にしてあげる」
「っ…じゃなくてっ…」
「いいから。大丈夫だから」
身を硬くして、俺から離れようとするのを片手で抑え込んで。
もう片方の手で、ゆっくりゆっくり頭を撫でてやった。
何度も、何度も。
そのうちに、俺を拒絶するように身体に入ってた力が抜けていって。
おずおずと、背中に腕が回ってきた。
「…ごめん…」
「いいって。気にしないで?俺はさ、誰かの心の隙間を埋められれば、それでいいんだから」
そう言うと。
また、すんっと鼻が鳴るのが聞こえた。