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イチオクノホシ【気象系BL】

第1章 協奏曲 ─concerto─


「翔ちゃん、まだ上がれない?」

その日は少し残業になっちゃって。

もしかしてまだいるかもと、帰りに営業部を覗いたら、コーヒーを飲みながらなんか資料を読んでる姿を見つけた。

「まだ、もうちょっと」

デスクの傍までやってきた俺をチラッと見て、でもすぐにまた視線を紙に落とすから。

俺はぱっと資料を取り上げる。

「ちょっ…なに!?」
「帰ろ?こんなの、明日でいいでしょ?」
「なに勝手なことっ…」
「じゃあ、お疲れさまっした~」

怒り出した翔ちゃんの手をガシッと掴んで、力任せに引っ張る。


だってさ

ホントに忙しいときはこんなにのんびりコーヒーなんて飲んでないんだもん

絶対、時間潰してたに決まってる


「…ったく…」

ぶつくさ言いながらも、翔ちゃんはおとなしく俺に従って立ち上がった。

「じゃあ、お先」
「「お疲れさまでーす」」

翔ちゃんに向かって挨拶する営業部の人たちの中に、口元を片手で隠して笑ってる浜辺さんを見つけて。

「じゃあ、またね」
「はい。お疲れさまでした」

手を振ると、ニコニコしながらお辞儀してくれる。

「…なんで仲良くなってんの?」

フロアを出て、エレベーターに乗り込んだら、翔ちゃんが不思議そうに訊ねてきた。

「んー?んふふ…内緒」
「なにそれ…」
「それよりさぁ、これから買い物に付き合ってよ」
「いいけど…なに買うの?」
「キャンプ用品!だって、翔ちゃんがやっと一緒に行く気になってくれたんだもん!」
「え、今から?週末でよくない?」
「今!今がいいの!善は急げって言うでしょ!」
「え~…」

おもいっきり嫌そうな顔するから。

俺は背伸びして、そのほっぺたに触れるだけのキスをした。

「ちょっ…こんなとこで!」
「いいじゃん。誰も乗ってないし」
「カメラあるでしょ!つか、その前にここ会社!」

ほっぺたを押さえながら、真っ赤になった翔ちゃんは、とってもとっても可愛くって。

「信じらんない!今度やったら、二度と会社では口利かねぇっ!」
「え~っ!けち!」
「けちじゃない!」





ねぇ翔ちゃん

俺たち幸せだよね?


こんなに優しい人たちに囲まれててさ


だから

これからもみんなに笑顔で見守ってもらえるように



いっぱいいっぱい愛し合おうね♡







【おわり】





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