第1章 協奏曲 ─concerto─
【智side】
「…うん。今日もばっちり」
味噌汁の味に満足して。
俺はコンロの火を止めた。
彼好みの、ちょっとしょっぱめの味噌汁と。
少し固めのホカホカのご飯。
おかずは、母ちゃんがクール宅急便で昨日送ってきたぬか漬けに、今日はちょっと奮発してアジの干物。
「上出来じゃん♪」
食卓に並んだいつもより豪華な朝食に、満足して。
俺は愛しい彼の眠るベッドルームのドアを開けた。
「翔くん、朝だよー」
掛け布団をベッドの下に蹴っ飛ばして、大の字になって眠るその肩を、ちょっと強めに叩く。
「ほら~!起きないと、遅刻だよっ!」
「ん~…」
なかなか起きないから、今度は強く揺さぶってみると、眉をぎゅっと真ん中に寄せて。
猫みたいに丸くなって壁の方を向いてしまった。
「もう…起きないと、襲っちゃうぞ?」
俺はベッドへ上がると、彼の上に跨がって。
自分的、一番色っぽい声で囁いてやる。
そうするとさ。
「…へぇ…やれるもんなら、やってみれば…?」
片目だけを薄く開けた翔くんが、面白そうに口の端を上げるんだ。
「…覚悟しろ」
俺は、その肩をぐいっと掴んでマットレスに押し付ける。
仰向けになった翔くんは、ようやくゆっくり両目を開けて。
挑むような眼差しで、俺を見つめた。
俺も真っ正面からそれを受け止めて。
そのぽってりとしたぷるぷるの唇にむしゃぶりつく。
「んっ…」
翔くんは抵抗することもなく、それを受け入れて。
ついでに俺を煽るように、やらしい声を漏らしたりして。
わざとだって
わかってんのにさ
俺のオレ
ぴょこんって反応しちゃったよ…