第3章 Kissから始めよう
「あっ、ちょっ…くすぐったいってば、はなっ…」
ぺろぺろ、ぺろぺろ。
はなが、しつこいくらいに櫻井の唇を舐める。
つーか!
それ俺のだからっ!
「もういいだろっ!はなっ!」
我慢ならなくて。
つい大声を上げてしまったら、はなはニャンっと短く鳴いて、櫻井の膝から飛び降りた。
「ちょっとっ…!なんでそんな大きな声っ…」
キッと目を吊り上げた肩を強く掴み。
自分の唇を、はなの唾液でテカテカと光ってるそれへと押し付けた。
「んんっ…!」
見開かれた大きな瞳に、俺がいっぱいに写っていて。
超至近距離でじっと見つめながら、薄く開いた唇の奥へと舌を差し込むと。
すっと逸らされた眼差しが、ゆっくりと降りてきた瞼の向こうに隠れた。
「んっ…ふ…」
逃げるように奥に引っ込んでた舌を掬いとり、激しく絡める。
最初はただ為されるがままだった櫻井は、少しずつ俺の動きに合わせるように舌を絡めてきて。
おずおずと背中に回ってきた指先が、ぎゅっとシャツを握るのがひどく可愛いと思う。
「…っ…は…ちょっ…苦しっ…」
欲望のままにさらに深いキスを続けようとしたら、首を捻って唇を離された。
頬を薔薇色に染めた櫻井は、大きく肩で息をしてる。
「おまえ…息、してた?」
「で、できるかっ…キスの最中に、どうやって息するんだよっ…」
真っ赤な目で俺を睨んでくるのが、震えるくらい愛おしい。
「ぷっ…まだまだ、これからだな」
「な、なにがっ…」
「一個ずつ、俺が教えてやる」
「お、教える…って…」
偶然の事故みたいなキスから動き出した恋だから
キスから始めるのも悪くない
とりあえず、初めの一歩は…
「今日からよろしくな?翔」
初めて、名前で呼んでみると。
翔はたちまち耳まで真っ赤になる。
「…こちらこそ…よろしく………潤…」
聞こえないくらいの小さな小さな声で俺の名前を紡いだ唇を。
俺はゆっくりと塞いだ。
《END》