第3章 page1
7時50分いつもの路線、いつもの号車。
降りる前には先生に見つからないようイヤホンとスマホを鞄にしまう。
定期を鞄から取り出す…も定期が見つからない。
おかしいな、家出るときはあったっていうか使ったからあるはずなのに。
もしかしてだけど落としたり…?
定期を無くしたことがある方はこの状況が痛いほどわかるかも分かるかもしれない。
それに加えて私は昔から何かと物をなくすことが多く母には「今度の定期は絶対に無くすんじゃないわよ」と言われているのだ。
まずい。本当に大変なことになってしまった。
呆然としていると後ろから落ち着いた低いトーンの声の主に
「おはよ」
と声をかけられた、と同時に見覚えのある定期ケースを手渡された。