第16章 倉持の気持ち
最近亮さんがおかしい気がする。
練習や試合は集中してるんだが、ふとした時矢代のこと見てる気がする。
決まって御幸のやつと一緒にいる時だ。
あいつらはいつも一緒にいる。
1年から一緒のクラスだし、御幸はあんな性格だし、矢代の兄ちゃんの事もあってか最初から信頼してるって感じがビシビシ伝わってくる。
矢代はモテる.。
本人が自覚していないのがめんどくせぇ。
御幸とくっついたり離れたり。
原因は御幸のやつだろうから、ほっとくが見ててイライラする。
さっさと告っちまえよ。
そしたら周りもちょっかいかけたりしねぇのに。
クラスで夫婦なんて呼ばれて、今の関係にあぐらかいてたら、知らないうちに誰かにかっさわられる可能性だってあるのに。
じれったい奴らだ。
野球部でも実は惚れてるやついるんじゃねぇか?
まさか、亮さんも?!
その事に気づいて、驚愕した。
あの亮さんがマジで?
オフの間に先輩からも可愛がられるようになって、部員よりも誰よりも長くグラウンドにいて、みんなの事を見守ってるやつ。
特別に思わない方が、珍しいかもな。
これくらい平気だと隠しているちょっとした怪我も、矢代はすぐに見抜く。
おかげで大事に至らずにすんでるってやつも大勢いた。
亮さんもよくあいつにちょっかいをかけるようになった。
矢代は色恋沙汰は超がつくほど鈍感だから、御幸の気持ちも亮さんの気持ちにも気づいてないだろうが、どうなるんだよ。
大会中になんか起こるのはやめてくれよ。
矢代がクラスにいない時を見計らって、御幸のやつを探りに行った。
「お前さ、そろそろ決着つけようとは思わねぇの?」
「んー?なんのことだ?
まさか、大事な大会中に告れとか言わねぇよな。舞ちゃんは必死で甲子園を目指してる俺達の事応援してくれてる。
俺も試合に集中したいし、何より幻滅されたくねぇよ。
大会中に何言ってんの?って言われるのがオチだ」
「誰かが先に告ってそっちに行っても文句はねぇんだな?」
「亮さんか?」
「お前、気づいて…」
近くにライバルがいるのに、なんだこの余裕。
マジで腹が立つ。