第13章 大会直前

大阪桐生との練習試合。
降谷くんと沢村くんで1試合を投げさせるらしい。

合宿で疲れもあるから、厳しいピッチングになるだろう。
身体が疲れているからこそ、コントロールの大切さを知る時だよ、降谷くん。

御幸くんもその意図があるのか、不敵な笑みを浮かべてるし。

4回で100球以上投げてる。
四球も多いな。
野手も声かけてないのは、たぶんわざと。
普段ならこんなこと絶対ないもん。
後ろから自分たちがいるぞって声援を送るのが青道の野球。


降谷くんのタイムに御幸くんが慌てた感じで駆け寄っていく。


「わ、笑ってる？」

降谷くんに何を言われたのかわからないけど、肩を震わせて御幸くんがマウンド近くで笑ってた。

キャッチャーミットで降谷くんの胸をポンと、叩きポジションに戻っていく。



あ、降谷くんの顔つきが変わった…。

「腕もちゃんと振れてる…何言ったんだろ…」

「さすが御幸！ピッチャーを乗せるのがうまいな」

御幸くんはピッチャーの欲しい言葉がわかっていそう。
そう思うことが時々ある。

センターフライのホームゲッツーでこの回が終わった。

「純先輩、ナイスバックホーム！ね、貴子先輩！！」

顔を少し赤らめてそうねと言った。
今ので貴子先輩の好きな人、わかっちゃったかも…。


「野球を一人でやってんじゃねぇぞ、このバカタレ」

純先輩の声がここまで聞こえてきた。

「伊佐敷先輩かっこいい！」
「ね、本当にかっこいいですよね、貴子先輩！」

「こ、こら！先輩を揶揄うな！
ドリンクそろそろきれてるんじゃないかな？舞、ドリンクサーバー見てきて。」

「はい！了解しました！」



ベンチに走っていくと、降谷くんと御幸くんの会話が聞こえてくる。

「さて、点でも取ってきてやるかな、誰かさんのために。」

そうカッコつけて、バッターボックスに入った。


あは……、ピッチャーゴロ…。
ランナーがいたら、すごく頼りになるのに…。

すまんすまんと、頭をかく御幸くんとバチッと目があった。

やっちゃったと舌をペロッと出して、ちょけて来た御幸くんに口パクで、ムラありすぎと伝える。

彼は、フッと口角をあげて笑った。