第10章 怒り
「降谷くん、こっち来て」
彼の指先は血まみれだった。
手当てをして、彼に聞いてみた。
「指先のケア、ちゃんとやってた?」
こんなひどい割れ方…。
マニキュアを塗ったり、保湿のためにハンドクリームを塗ったりしなければだめだよって、この前伝えたのに。
彼の爪を見れば何もやってなかったことは一目瞭然だった。
「おだいじに。」
投手としての基本。
保湿クリームを塗って綿手袋を履いて寝てる投手がいたりする。
そこまで気を使わないといけないのが投手の指先。
「舞ちゃん、降谷の指どうだった?」
「縦に割れてた。ごめんね、もっとちゃんとケアの大事さ伝えなきゃいけなかった。」
「それをやらなかったのは降谷の怠慢。俺も任せっきりだった。
怒んないでやって。」
「………怒って、ない」
御幸くんは困ったように笑って、頭を撫でて試合に戻っていった。
試合後、御幸くんに連れられて降谷くんが謝りに来た。
「別にいいのに。」
「舞ちゃん、拗ねないの。」
「練習中試合中頑張って、頑張った結果怪我するのは仕方ないと思うの。でも、普段のケア次第で避けられるはずの怪我はなんか許せない」
ら
投手は指先の感覚がとても大事なのに。
「舞ちゃん怒らせたらこえーぞ
人からのアドバイスや指導は素直に受けること。な?」
「はい。すみません、わかりました」
「こいつも監督から、ボール触るの禁止されて、ケアの大事さちゃんとわかったと思うから、許してやって」
「わかった、きつい言い方してごめんね」
ペコって頭を下げて降谷くんは走りにいった。
「大人気なかったかな?めんどくさいマネージャーだったよね、ごめんね。」
「いーや、今ので降谷もよくわかっただろ」
気にすんなって、言ってくれた。
それから降谷くんは綿手袋をして眠るようになったと同室の小野くんが言ってた。
「マネージャー、これで大丈夫ですか?」
「うん、きれいにできてると思う。ちゃんとやってるんだね」
「もうこんなことでマネージャーに辛い顔させたくないですから。」
あら…そんなにひどい顔してたんだ。
「ごめんね、私の兄貴が1番気を使ってたのが指先だから、つい…」
「あなたに認めてもらえるように頑張ります。」
降谷くんは強く言い切った。