第1章 一年生
邪魔になるといけないから、部室に移動して続きをやるためにスコアブックに向かった。
「いつも思ってたけど、綺麗な字だな」
頭上から突然、降ってきた声に、体がビクってなった。
「びっくりしたー。」
悪い悪いと軽く言う御幸くん。
急に話しかけられて、まだ心臓がバクバク言ってる。
「いつも遅くまでありがとな
みんな、すげぇって言ってるぞ」
「ほんと?!そう言ってもらえて嬉しい。
でも、まだまだだよ。選手の目には敵わない」
「俺たちとはまた違った角度から、試合とか練習見てくれるからそれもまたいい判断材料となるんだ。頼もしい、マネージャーだよ。」
チームの為になってるなら、それが一番嬉しい。
御幸くんの練習相手になることもよくあった。
主にTバッティングだ。
「そんなインばっかついてくんな」
「え、だめ?
御幸くん今日インコース打ちにくそうにしてたから、そこ練習したいのかなって思ってた…」
「バレてら…全く、ほんとよく見てんね。」
「あ、あのね…私からはどうしても言いにくいんだけど…伝えてくれる?」
「ん?」
「3年のエースの人、アイシングの時間が短すぎると思うんだけど…もう10分長くした方がいいかもしんない」
あ!御幸くんも1年か…先輩に言いにくいのは変わんないかな…
「なーんだ…俺の事だけじゃねぇのか…ざーんねん。」
「へ?」
「なんでもねぇよ。投手陣には上手いこと伝えとくよ。」
ほれ、次!と言われたのでトス投げを再開した。
「ありがとう。助かった」
「いえいえ。どういたしまして。」
片付けをしていると、キャッチボールに誘われた。
「ほんと、女の子が投げる球だとは思えねぇな。」
「相手が御幸くんだからじゃない?
すごく投げやすい。」
「キャッチャー冥利につきること言ってくれるね」
倉持くんもやってきて、御幸くんが座って構えてくれた。
倉持くんはバットを構える。
「投げ込んでこいよ」
何球か投げ込んで、いい球だと褒めてくれる。
「いい笑顔すんじゃん、ヒャハー」
「楽しかった!ありがとう」
「また、やろうぜ」
練習で疲れてるのに、時々こうして付き合ってくれる。
いい人達だなぁとしみじみ思った。