第9章 紅白戦
「御幸、部屋にいねぇんだけどどこにいるか知ってるか?」
「伊佐敷先輩どうしました?御幸くんなら、降谷くんと一緒に室内練習場に。
どうしても自分の球を受けてほしいって降谷くんが。」
「ったく、先輩の誘いを断りやがって。」
降谷くんに引きずられるように、渋々ついて行った。
「呼んできましょうか?」
「今日はもういいよ、じゃな。
いくら寮だからっていつまでもグラウンドにいるなよ」
「はい、先輩!」
と、返事をしつつもふたりの様子を伺いに室内練習場に行ってみた。
ドーンと聞いた事のないキャッチャーミットが鳴る音。
え、降谷くんの投げたボールの音なの。
御幸くんも微動だにせずに軽々受けてるけど、初見だよね。
御幸くんのキャッチング能力も相当だ。
「舞ちゃん.、降谷のボールバッターボックスで見てみる?」
あ、覗いてたのバレてた。
「いやいや、降谷くんがびっくりしてるよ」
女子マネージャーがバッターボックスに立つなんて思わないよ。
「いいか、降谷。舞ちゃんの野球を見る目は確かだ。一度見てもらったほうがいい。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「思ったより素直な子だね。」
「いつまで続くかね。」
何球か球筋を見せてもらった。
ゾーンに入れば、なかなか撃たれないと思うけど。
「見解は?」
「うーん。三振を取りに行くタイプだし、取りたいと思ってる。
打たせてとるタイプの投手より、球数が増えるから更に体力が必要だけど、とてもその体力があるとは思えない。」
うっ…とうめき声がした。
図星?
「なっ、すげぇだろこの子。
舞ちゃんの言うことはよく聞く事。選手よりも選手の事わかってっから」
「いや、それはさすがにわかんないって」
もっと投げたいと言う降谷くんを説得して解散した。
「あー、そだ。伊佐敷先輩、御幸くんの事探してたよ」
「うぉ!DVD見るって言ってたの忘れてた!やべぇ…純さん怒ってた?」
「今日はもういいって。」
「まずったなぁ…」
明日から御幸くんは降谷くんと。
沢村くんは、クリス先輩と。
「あのふたり絶対剃り合わないと思うんだけど、大丈夫かな?」
「沢村の事はクリス先輩に任しておけば大丈夫だろ。」
なんとなく嫌な予感しかしない。