第9章 紅白戦
降谷くんからの御幸くんへの熱烈なラブコール。
後輩投手にモテモテだねと、夕食が終わった御幸くんに言う。
「入部したての1年ぶつけて、先輩達の闘争心煽るのが目的。
それに、男にモテても嬉しくねぇよ」
「正捕手としては嬉しいんじゃないの?」
降谷くんも沢村くんも御幸くんがいたから、入部してきたと聞いた。
「うるせー。
一応スコアつけといてね。1年の中から何人投手が生き残るかわかんねぇけど、どんな球種を持ってるのか知っときたいし」
「うん!了解!!」
関東大会があるし、主力はオフになった。
「3年の先輩はラストチャンスだもんね。1年生に負けるわけには行かないって本気出すと思うし。」
「ボコボコにされて、自信もプライドもへし折られるんじゃねぇ?主力じゃねぇっていっても、他所のチームなら確実にレギュラー狙える人達ばかりだ。」
高校野球はそんなに甘くねぇと御幸くんは自主練に向かう。
「アップに付き合ってやるよ」
面白がってるのか、ほっとけないのか、沢村くんにかまう御幸くん。
予想通り、大人気ないとも取れる点差がついた。
先輩達からの洗礼。
早く終わってくれと言わんばかりの雰囲気。
諦めてないのは、沢村くんだけに見えた。
「苦しめ苦しめ、ここで這い上がって来なきゃ、こっちには来れねぇぞ」
オフなのに、結局グラウンドに残ってるし。
1球で一軍に上がった降谷くん。
本来のピッチングをすれば全国に通用すると監督直々に言われた丹波さんも1軍に帰り咲いた。
「この回でやめちゃうかな?」
フェンスの向こうの御幸くんに聞いてみた。
「どうかな。まだまだやる気満々のやついるしな。」
突破口を開いてやると意気込んでいる沢村くん。
投手としては魅力的だけど、バッティングは……
振り逃げ…。
塁に出たぞという声に
「フッ…振り逃げだけどな」と御幸くんが返した。
「でも、塁に出なきゃ点入んないし、気持ちは誰にも負けてないように見えるけど。」
「ふーん、沢村のことえらい勝ってるじゃん。妬けるー」
まだ何か爪痕を残してやろうとしてるのは、沢村くんと、"代打、俺"と言って打席に向かった、小湊先輩にそっくりな1年生。
「あの子、小湊先輩の弟?!」
「またおもしろそうな奴が出てきたな」
そう言って御幸くんは笑っていた。