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ダイヤのA 御幸一也

第67章 7月突入




合宿最後の練習試合も終わって、明日からテスト週間。
練習も軽めになる。

「英語、どうだった?」
「手応えあり。」
「ほんと要領いいよねぇ。」
「赤点は回避できたはずだ。」

倉持くん、一也と並んで寮まで歩く。

「奥村。」

前を歩く奥村くんに一也が声をかけた。
先輩らしいこと言っちゃって。

「練習試合、身体動かなかったろ。」
小野くんも奥村くんを気にかけてる。
怪我して試合出れなくて悔しくてしょうがないはずなのに、後輩のことを気にかけて、アドバイスできる人なんてそうそういないよな。
おっきい人だ。

「去年は小湊、御幸だって1年の時はノックから外されてた、な?」
小野くんが私にも同意を求めてきた。
「うん、2人とも悔しそうに唇噛んでたよ。」
「大丈夫、戦力として認められてなかったらベンチには入ってない。」

小野くんの話に密かに感動していた。
「ブルペンやベンチにいたって戦うことはできる。」

「私達はスタンドから一緒に戦おうね。声枯れるまで声援送ろう!」
浅田くん、瀬戸くん、九鬼くんに私も声をかけた。

「矢代は毎年のように喉潰してるだろう。
まぁ、その声援が選手たちの後押しになってるんだ。ベンチにいてお前の声が聞こえないと今日いなかったっけって探すもんな。」

「今年はばっちりケアするよ!」
応援しかできないし。

みんな着替えに散り散りに部屋へと入っていく。

「矢代!」
「なにー?」
「これ、ありがとうな。」
スマホにぶら下がったストラップを見せてお礼を言ってくれた。

「クラスの女子たちからも可愛いって評判だった。」
手芸部の友達から教えてもらった第二弾。
小さい折り紙で鶴を折ってマニキュアのトップコートで補強してストラップを作った。
小野くんの指が早く治りますようにって願いを込めて作らせてもらった。

「気休めだけどね。気に入ってつけてくれるなら嬉しいよ。ありがとう。」
「器用だよな。こんなにちっちゃく鶴折れるの。」

チマチマコツコツ作業するのが案外好きだったりする。
マネージャーみんなで作ったお守りもあと少しで完成する。
1番から20番まで。
監督、コーチ、部長たちのも。

3年生のベンチ入りが叶わなかった人たちには、丁寧に名前を刺繍していく。
渡すのは背番号の発表が終わったあと。
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