第66章 抽選会場にて
トーナメント表を持ち帰る。
シードだから3回戦から、初戦の相手はまだわからない。
「創生と八弥王子が気になる?」
一也の視線の先はその2校を見つめてる。
東京選抜でも目立ってたもんなぁ。
「油断出来ないチームだぞ。」
それよりも気になるのは由良総合。前任の榊監督が秋から就任してる。
勝ち上がってくるのは由良総合かもしれないな。
「ナベちゃん、偵察行くよね。私も連れてって。」
「もちろんそのつもりだけど?御幸、矢代借りるな。」
「あぁ、頼んだぞ。」
学校数が多いから球場はあちらこちら。手分けしないと回れないな。
どの試合を誰か行くか、どの試合をチェックすべきか話し合った。
「忙しくなるね。」
「でも、これで最後だもんね。」
私達にできることは全部やって、選手を送り出したい。
「ブルペンにもカメラ回したほうがいいかな?」
「それいいね。夏はどのチームも総力戦だし、一人じゃ投げきれないからね。」
お父さんにお願いして、うちのビデオカメラ借りようかな…。
ブブッとポケットのスマホの通知がきた。
「あ、楊くんだ。一也にも来てるんじゃない?」
「美馬からも来てる。今面倒くせーからあとにしよ」
ちょっとちょっと…そんなだから、みんな私に連絡よこすんだよ。
一也から返事返ってこないけどなんかあったか?って。
鵜久森の梅ちゃんや楊くんたち選抜メンバーでグループトークを作ったみたいだけど、一也はガラケーだからと変わりに私が入る事になった。
メアドは交換したみたいで、一也に直接連絡したいことがあれば、メールしてるみたいだけど…。
大抵はこっちにもメッセージが飛んでくる。
スマホをポチポチしていたら、スッと取られて電源オフ。
「2塁への送球練習するから、付き合って。」
わかったと返事をしたけど、次電源を入れたときのメッセージの数を想像して、軽く身震いした。
話題に乗り遅れると追うのがまず大変なんだよね…。
アップシューズに履き替えて、まずは2塁ベースの上にグローブを構えた。
何度受けても気持ちいいくらいのドンピシャ。
また速くなった?
成宮鳴も進化してるけど、一也だって負けてない。