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ダイヤのA 御幸一也

第66章 抽選会場にて


「俊平、ちょっと気になってる事があるんだけど…」

「ん?」

屈んでもらって俊平の耳元で喋った。
「俊平、足どうしたの?」

「ハッ、驚いた…なんでわかった?」
「ちょっと足気にしてるなって思って。いつやったの?もう痛くないの?」

他のチームに聞かれないように極力小声で。
多分私に見破られないように、意識したんだろう。
それが私には変に違和感として見えた。

「ほんともう大丈夫なんだ。まさか見抜かれるなんてな。」
「ほんとに?隠してない?」
「そんな顔して心配すんなよ。ぐらつくだろ?」

オフの間に大きくなった俊平の身体。
選抜での活躍。
薬師も強いチームだけど青道と大きく違うのは、選手の人数。
少し痛いところがあっても、人数不足が理由でなかなか言い出せなくて悪化しちゃうのはよくある。
投手としても打者としてもチームの核になる俊平の身体への負担は、私の想像を超えてると思う。

「大丈夫っていうなら信じるからね。」
「青道とやるまで負けれねぇよ。お前たちに勝ったのは練習試合だけだからな。負けたまま引退なんてできねぇよ。」

「お互い悔いのないようにしようね。」

「ん、じゃぁな。」

席につく俊平を見届けて、コーチが待つ席に私もついた。

「幼なじみだったか?」
「そうですね。幼稚園から一緒でした。」



私達双子と俊平は幼稚園から一緒。
小学校の時に私達が引っ越したから家はちょっと遠くなったけど、同じ学区だった。
低学年の時に野球に出会って、テレビから流れてくる高校野球に3人で目を輝かせてテレビに齧りついてみてた。

リトルリーグは一緒のチーム。
シニアとボーイズに別れた。仲は良かったけど、別のチームでやりたいって言い出したのは兄貴。エースナンバーをかけて俊平と切磋琢磨してたのが懐かしい。1番と10番の取り合い。
沢村くんと降谷くんを見てるとなんとなく2人のリトル時代がチラつく。
中学校では、ずっと野球の話をしてた。
カーブはこうやって投げたほうがいいとか、カットボールはこうだとか。
最初に野球の知識をつけてくれたのは間違いなく兄貴と俊平。
配球表をつけて欲しいって俊平に言われて一生懸命勉強した。
兄貴にもお願いされて、ビデオを見ては1球1球紙に落としていく。
これは今の生活とそんなに変わんない。
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