第63章 白羽の矢
木崎戦は7-3。
3年生が本当にたくましく見えた。
青道は御幸一也だけじゃないって示してるみたい。
2試合目も終盤に勝ち越して19連勝。
この日の打点は全部3年生が叩き出した。
一也が帰ってきて、昨日と全く同じ光景を見た。
「ちょっと待て。先に監督に報告してくるから。舞も来て。」
ザワザワするみんなを制して、私を監督の元に連れて行った。
稲実の国友監督からの直々の願いだそうだ。
稲実も日曜日は練習試合を組んでいてスコアラーを出せない。
マネージャーがたくさんいる青道から出してもらえないかと。
できれば私がいいとご指名があったらしい。
「帰ってきたらいつも通り配球表をつけてもらわないといけなくなるが行くか?
御幸だけじゃなくお前の目からも何か情報が得られたら申し分ない。」
「やります。何試合でも!スコアラーさせてください。」
驚いたけど、何かクセが掴めるかもしれないし、何よりスコアラーとして指名してもらえたのがすごく嬉しい。
みんなも行ってこいと背中を押してくれた。
「成宮と喧嘩すんなよ。」
「明日は大人しくしとくよ。」
「どーだかな。」
一也はいつも通りでいいぞって微笑んでくれた。
目の前にするとすごい。
強豪校の主力メンバーがズラリ…。
自己紹介を噛んでしまって、成宮くんには馬鹿にされるし、一也は肩を小刻みに揺らせて笑ってるし…。
恥ずかしい。
「この子が御幸の自慢の彼女か。よろしく。」
うわ、楊舜臣だ。
自慢?一也、なんて言ったんだろう…。
「よろしくお願いします。」
「そうそう。自慢の彼女。」
「泣き虫のちんちくりん、一也には勿体無いやつだよ。楊も構わなくていーぞ。」
成宮鳴め…散々な言われようだな…。
今日は反論しない。大人しく、大人しく。
監督からオーダー表を受け取りスコアブックに書いていく。
一也は3番ファースト。
先発は楊くんか…
「綺麗な字だな。」
「え?あ、ありがとう。えーと台湾語でありがとうって、多謝你って言うんだっけ?発音合ってる?」
「凄いな、そうそれでいい。」
楊くんとはなんだか仲良くなれそうだな。
一也も気が合うと思うって言ってくれてたし、なんか波長が合う気がする。
成宮鳴はベーって舌を出して絡んでくるし、もう放っとこう!