第62章 激戦
「おかえり。」
「ただいま。」
ゾノくんたちに帰ってきて早々に捕まって質問攻めにあってた一也がげっそりしてる。
「どうだった?って聞かれ飽きてるかな?」
「いい刺激になったよ。明川の楊舜臣覚えてるだろ?あいつの投球練習受けたけど、全部構えた所にドンピシャ。たまらなかったね。」
さすが精密機械。
試合に出られないってわかってたはずなのに、球威もコントロールも更に磨きがかかってた、オフの間もトレーニングしてたんだろうなって、意気揚々と話す一也は楽しそうだ。
「相性は?」
「やっぱバッチリだな。こっちの要求通り、それ以上の球がくる。
舞と話合うと思うぞ。」
「そうなの?一也、仲良くなってきたんだ。」
メールアドレスを交換してきたらしい。
早速メールが来てて、ポチポチと返信してた。
ほんとに刺激受けて楽しんできたんだなぁ。
キャプテンとして責任感があって、真剣な顔して野球してるのもかっこいいんだけど。
キャプテンとか4番とかプレッシャーないところでのびのびと野球やってる一也も見てみたい。
きっとあの頃と何も変わってないんだろうな…。
初めて会ったグラウンドで夢中でボールを追いかけてキラキラしてたあの頃と…。
「あ、そうだ!ファーストの守備練習した。」
「おやおや…乾くんにポジション譲っちゃったの?」
「選抜チームは稲実の主力が揃ってるそうそう簡単にマスク被らせてもらえるわけねぇよ。」
そりゃそうだよね。向こうにはリスクしかないもんね。
「でも、ちょっとだけでも受けてきたんでしょ?」
「お?なんでわかった?」
「顔。野球始めたての少年みたいなそんな顔してる。」
ストレートだけだったけどなと一也は口角をあげた。
ストレートだけでも球筋見れて良かったのかな。
「やっぱすげぇわ。倒し甲斐ある。」
明日は哲さんの大学と練習試合。
「哲さんに私も会いたいな。よろしく言っといてね。」
「ほんと先輩たち好きだよな。」
気持ちはわからなくはないけど、と髪の毛をワシャワシャされた。
「キャップ!お疲れの所すみません!」
沢村くんが飛び込んできて、一也が眉間にシワを一瞬入れた。