第55章 遠征での出会い
「じゃ、行ってくるね。」
不安そうな笑顔を浮かべて後輩マネたちに見送られた。
「あの子達大丈夫かな?」
「なんとかなるって」
バスの中でそんな会話をしていた。
ものの10分でバスに酔ったのは不覚…。
「舞ちゃん、大丈夫か?
こっちおいで。窓際と席変わってやるから。」
お言葉に甘えて御幸くんの隣に移動した。
「吐きそう?」
フルフルと首を降った。
目眩みたいに視界がグルグル回ってるだけだから、その心配はない。
窓を開けてくれて、御幸くんの肩を借りた。
「寝てな。」
「ごめんね。」
「役得、役得。」
酔い止めも効いてきて、御幸くんの肩も居心地がいい。
ウトウトして目が覚めた時にはもう気持ち悪いのもどっか行ってた。
「平気?」
「うん!もう大丈夫、酔い止め飲むのすっかり忘れてた。」
気持ち切り替えて、試合に集中しなきゃな。
反省と課題をしっかり話し合ったミーティングも終わり、今日の配球表と明日の分とを御幸くんに渡しに行った。
ノックすると由井くんが開けてくれて、ナベちゃん沢村くん御幸くんの4人で明日の白龍の映像を見てたみたいだ。
先発の意味わかってるか?の御幸くんの問に沢村くんは
「この試合でいいピッチングしたらエースになれるのか」と返した。
「明日の試合、俺はお前の力を最大限引き出すことだけを考える。
お前は目の前のバッターひとりひとりを打ち取ることだけ考えろ。
人からの評価は後からついてくる」
みんなが部屋から出ていって、御幸くんとふたりになった。
パチパチと手を叩くと、やめてと頭を抱えた。
「タイミングわりぃよ…」
「なんでよ、いい事言ってたと思うよ。」
「舞ちゃんに聞かれたのが1番恥ずかしい。」
配球表をパラパラと捲る。
「つうかさ、昨日何試合分配球表つけたの?
バスに酔ったの明らかそれのせいだろ?」
「帰ったら、球場で仲良くなったおじさま達からDVD届いてたんだもん…。今回の対戦相手ばっかりだったから、そりゃすぐにデータに落とすって。」
「それで体調悪くしてたら元も子もねえの!」
「はーい。」
シュンとしながら返事をした。