第54章 御幸塾
でも……
やりすぎるのもよくないかも…。
夏が終わったら…あの子達だけでチームを支えていかなきゃいけないから。
御幸くんのように、自分で考えてやらせてあげるのも先輩の役目かもなぁ。
ここまでにしとこう…。
そう思い直して部室の電気を消した。
「今、帰りですか?
お疲れ様です。」
東条くん、金丸くんが着替えて正門の方に歩いていってる。
「うん、帰るよー。お疲れ様。」
「コンビニ行くんでお供します。」
選手の二人も遠征準備をしているらしく、足りないものを買いに行くらしい。
この時間だとコンビニくらいしか開いてないもんなぁ…。
「あれ、東条くん…もしかして、ピッチャー狙ってたりする?」
「え?!なんでですか?」
だって…爪が…。
バッティングもいい。しっかり自分で考えてプレーできるし、外野で定着しているから、てっきり。
でも、爪を見るとピッチャーを諦めた人のじゃないってわかる。
「さすが!見抜きますね。こいつ、案外諦め悪いんすよ。」
いいと思う。負けず嫌いの集まりが日本一になれるんだって思うから、諦めが悪くてなんぼ。
「マウンドに立たせてもらったじゃなくて、自分の力で立ちたいって、今はそう思ってます。」
「すごいね…。応援してる。」
みんな、頑張ってる。
ほんと負けてられない。
「今日は、御幸先輩待たないんすか?」
「うん。野球に集中したいだろうし、投手陣の練習にも付き合って自分の練習や時間を削ってもらうのも悪いしね。」
「これだけ野球に理解ある人と付き合えたらいいよね。」
「だな。プレーの事もよくわかってるし、姉さんと付き合えてる御幸先輩はほんと幸せ者だって2年の間でも言ってますよ。」
いつの間にか金丸くんにも姉さん呼びされてる…。
「そんないいもんじゃないよ。野球馬鹿なだけ。頑張ってる御幸くんを応援したいだけだもん。」
話し込んでしまって、後から来た御幸くん倉持くんに怒られた。
「ったく、結局いつもより遅いじゃねぇか。
付き合わなくていいって、言ったの何だったんだよ。」
「後輩達との交流も大事だよ?」
「御幸は妬いてるだけだから気にすんな。ほらお前らカップルの邪魔してねぇで行くぞ」
置いてけぼりを食らった私達は顔を見合わせて笑った。