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ダイヤのA 御幸一也

第53章 ※  体温


「真田と連絡取ってる?」

「ん、選抜辞退したって連絡は来てたかな。詳しくは話してくれなかったけど、薬師的には主力の俊平の球筋とか見せたくないとかあるのかな?」

「かもな。鳴も俺相手に投げてこねぇかもしんねぇし。
つうか、自分で振っといてアレだけど、ピロートークが野球の話って、どんだけ色気ねぇんだよ。」

「ま、野球バカって事で…。」

クスクスと笑い合って、それからしばらく野球談義に花が咲いた。

「さてと、そろそろ帰っかな…」
「え…」
「なぁに、寂し?」
「うん…」

御幸くんの腕に自分のを絡める。
引き寄せられて、おでこにキスをしてくれた。

もうすぐ消灯時間だし、帰らなきゃいけないこともちゃんとわかってる。
服を着ている御幸くんの背中に、もう一度だげ、張り付いた。

お腹に回った手に御幸くんは優しく手を重ねてくれた。

「また明日な」

向き直って、髪を撫でて毛先にキスをしていく。

おやすみと言った背中を見えなくなるまでずっと窓を開けて眺めていた。
お風呂に入り直して、鏡に映った首元を見て驚愕する。
隠しきれないほどのキスマーク。
こんなにつけられたっけ?と曖昧になってる記憶を呼び起こすけど、わからないまま。
髪の毛で隠れるかな?
練習あるのに結べないか…。


髪をおろして朝練に行くと、ニヤニヤ嬉しそうな御幸くんがおはよと声をかけてきた。

「髪下ろしてんの珍しいじゃん」
「そんなこと言うのはこの口かなぁ?」

御幸くんとじゃれていると倉持くんに冷やかされた。

教室でもずっとニヤニヤしてて、御幸くんと目が合う度に恥ずかしくなってくる。

ゴールデンウィークの試合日程が書かれた紙を眺めていた御幸くんの元に倉持くんがやってきた。

自分がいる間に沢村くんのナンバーズを完成させてやりたいってやらなきゃいけないことが多すぎると饒舌に話していた。

倉持くんと目があって、お互いキョトンとした顔を見せあった。

「なんだよ…」
「よく喋るから…びっくりして…」
「俺も」

なんか良からぬことを考えてそう…って思ってたのバレたら怒られそうだな。

東京選抜の話になって、3日とはいえ御幸くんがグラウンドにいないんだと改めて認識すると、なんともいえない気持ちに押しつぶされそうになった。

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