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ダイヤのA 御幸一也

第52章 夏に向かって


春季大会、準決勝で青道は負けた。

降谷くんが崩れたのは痛かったけど、打線が天久くんにいいようにやられてしまった。
追加点は一点だけ…。
試合後なのにみんなバットを振ってた。



「沢村の努力はずっと見てきたつもりだったんだが、こんなに早くあいつがエースナンバーを背負ってる姿は想像できてなかったかもなぁ」

夕日に照らされた汗が光ってる。
御幸くんはポツリと独り言みたいにつぶやいた。

「あのどこまでも前向きな性格は見習わないとね。」

「今日のマウンドは間違いなくエースの佇まいだった。」

そうだね…、投打に渡って大活躍。
打線の援護があったら…って悔やまれる。

沢村くんの今までの努力が、報われる日はいつなんだろう。

「勝ちたかった…。勝たせてやりたかったよ」

みんなそう思ってると思う。
だから、試合直後のミーティングまでの僅かな時間でもみんなバット持ってどっか行っちゃったんだもん。


「あと3ヶ月か…」

「ん?」

「あいつらと野球やれるのもあと3ヶ月なんだなぁって…」

3ヶ月なんてあっという間だ。
これまでの高校生活は家族と過ごすより部員と過ごした時間の方が長い。
3ヶ月後はどんな生活になってるのかなぁ…

きっと抜け殻状態だよね。

なんとなく一人にしておいた方がいいかなって思って、そろそろ夜食の準備を始めなきゃいけなかったし、食堂に行くねって階段を駆け下りた。


倉持くんがそこにいて、御幸くんに話しかける。

「まーた、隠れてバット振ってやがる。そんなに努力してる姿、こいつ以外に見せたくねぇか?」

「ごめん、倉持くん後は頼んだよ。」
選手同士の方がいろいろ相談し合えるし、私は席を外そう。
そろそろほんとにいい時間だし。
急げ、急げ!!

食堂に行くと唯ちゃんたちはもう準備を始めていた。

「ごめんね、遅くなっちゃった。」

「ううん、今始めた所だから」

おにぎりを握っていると、沢村くんが今日の試合のビデオを見るために食堂にやってきて、降谷くんも一緒に見るみたい。


「え、敗因で揉めてるの?!」
自分が原因で負けたと言い合いをしているの姿を見て食堂にいた人はキョトンとしている。

ナベちゃんがうまく締めてくれた。
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