第46章 試合後の夜に
「だと思った!散歩してる時に見つけて、舞ちゃんにも見せたいってずっと思ってた。」
「ありがとう。兄貴の想いも甲子園にも連れてきてくれたし、ほんと感謝しかないよ。」
兄貴のお守りも御幸くんは今でも持っててくれてる。
「力、貸してもらってるからな。これには。あいつが認めてくれたキャッチャーはこんなもんか?違うだろ?もっとやれる、やってみせるって思わせてくれる。」
首元からお守りを出して、握りしめた。
「それに、俺にはこれもある。」
クリスマスからつけてるネックレス。
それを指に引っ掛けて見せた。
「明日、試合の時交換しとこう。ネックレスだけど、舞ちゃんの代わりにグラウンドに連れてく。」
「もういいよ。その気持ちだけで十分。これ以上なにかしてもらったら、バチが当たりそう。」
「ていうのは建前で、俺が心強いから交換してて欲しいだけ。」
うまいよな…
そう言われたら交換せざる負えない。
しばらく海を眺めながらおしゃべりして、そうだ!と御幸くんがなにか思い出したらしい。
「忘れる所だった。バレンタインのお返し。
甲子園の準備とかでバタバタしてて当日お返しできなくてゴメンな。」
ホワイトデーの事をすっかり忘れていたのは女の子失格かな?
「忘れてたのに…ありがとう。開けていい?」
「どーぞ。」
かわいい缶に入ったのど飴とこれまたかわいいリップクリーム。
「舞ちゃんすぐに喉痛めるから。
それに唇カサカサするっていつも言ってたから、悩んだけどそれにした。」
「ありがとう!さっそくつけてみていい?」
「俺がしたい」
目を閉じて、大人しく塗ってもらった。
「でーきた」
目を開けた時に、御幸くんにチュッて唇を奪われた。
「ちょ…いきなりは反則…。」
「目閉じてさ…チューねだられてるのかと思っちゃった」
「もうー、それは塗ってくれるっていうから…」
「はいはい、ごめんなー」
絶対悪いなんて思ってない…。
そろそろ帰ろうかと手をつなぐ。
部屋の前まで送ってくれた。
「また明日。
日本庄野のスコアつけよろしく頼むな。」
「うん、スコアは任せて。おやすみ。」
別れ際、おでこにキスを落とされて少し顔が熱くなる。
熱が冷めないまま、自室の扉を開けた。