第36章 何か変わった?
御幸くんはいつから想ってくれていたのだろう。
その間にどれだけ傷つけていたのかな…。
鈍いなんて簡単な言葉じゃすまされない気がしてきた。
「ごめんね…」
「あー、ちげぇって。
今舞ちゃんとこうしてるのが嬉しいってこと。
ちゃんと好きだって自覚させるつもりだから、覚悟しとけよ。」
私だって御幸くんと一緒過ごせるのすごく楽しいし、おそろいマグカップも早く一緒に使いたいなって思ってる。
御幸くんの一言一言に好きだって気持ちが散りばめられてて、それにちゃんと応えられているか不安になった。
いつの間にか、彼が思ってる以上に好きになってるんだ。
先を歩く御幸くんの袖口をクイッと引っ張る。
「あのね…手、繋ぎたいな。だめ?」
「フッ、ハハハ…なんだこれやべー。嬉しすぎる。
喜んで繋ぎますとも。簡単に離してやんねぇからな。」
握られた手は、男っぽくゴツゴツしてて、マメもある。
野球を頑張ってる手。
自主練の時は、投手に付き合ってる事が多いから影でたくさんバットを振ってるんだろうな。
軽く握りしめると握り返してきた。
お返しとさっきより強く握る。
「野球部の握力舐めんな」
と、思いっきり握られた。
「痛い痛い!ギブです!ごめんなさい。」
こんなことで笑いあってるなんて、なかなかのバカップルだと思う。
日が暮れてきて、寮の夕食の時間が迫ってきた。
ご飯いらないって言ってきてないから、帰らないと。
「なんか名残り惜しいな。」
「うん。私もそう思う…。」
んーーーと少し考えて
「今日行っていい?」
と、聞いてきた。
御幸くんの腕にしがみついてコクンと頷く。
二人っきりで会えばまた離れがたくなるのに…。
少しでも一緒にいたい。
だんだんとわがままになってきちゃってるかも…。
御幸くんともっともっと一緒にいたいって思ってしまう。
身体を休めなきゃいけない時期に、こんなことしてていいのかなと葛藤と戦っていた。
「おじゃましまーす」
「ひぃー、やっぱりこれ心臓に悪いよ…ハラハラする」
「大丈夫だって!」
今日買ったマグカップにココアを淹れて机に並べた。
マグカップを見ているだけで顔がゆるんだ。