第34章 決戦前夜
おやすみと言って、寮に帰っていく背中を見つめる。
身体が離れてだいぶたつのに、御幸くんが触れたところが未だに熱い…。
御幸くんの事を考えると胸の奥がほかほか暖かくなった。経験したことない感じに戸惑った。
これが好きって感情?
明日試合なのに、全然眠れない…。
消灯時間を過ぎているけど、抜け出して温かい飲み物を買いにコンビニへ足を向けた。
「あれ、亮介先輩?」
「マネージャー、こんな遅くに一人は危ないんじゃない?」
亮介先輩は春市くんと練習していたはず。
遅くまでやってたんだなぁ。
コンビニのベンチに座った亮介先輩は、ここに座りなとベンチをポンポンと叩く。
「どうした?眠れない?」
「実はそうなんです…いろんなことあって整理できなくて…飲み物買いに来ました。」
「ふーん。もしかして…御幸の事好きだとか気づいた?」
飲み込もうとしていたミルクティーを危うく吹き出しそうになった。
「な、なんで?」
「いきなり女の顔してるもん。さっきまではそうじゃなかっただろ?」
女の顔??
なんだ、それ…。変な顔になってるのかとペタペタと時分の顔を触った。
「別になんもついてやしないって。自覚したんなら、大事にしなよ。頑なだった君の心を溶かしたのは御幸だ。
あいつ、ひとりで全部解決しようと気負ってるから、支えてやって。」
頑な……。
「きっと認めないだろうけど、君は御幸にしか心開いてないんだよ。」
グサリと亮介先輩の言葉が胸に刺さる。
「御幸と僕らは大きく違う。君の懐に入れなかった。元から選んでもらえるなんて思ってなかったけど、気づいたんだ。
御幸にだけに見せる笑顔に惹かれていたこと」
それって…。
「あ、やっと気づいちゃった?
もう吹っ切ってるから、俺のことは気にしないでいいよ。
大事な試合なんだから、帰って寝な。
一人で帰れるよね?」
「はい。おやすみなさい。」
人にここまで言われなきゃ気づかないって…本当ダメなやつ…
ぐるぐるといろんなことを考えて、結局寝付いたのは明け方。
それでもすぐに目が覚めてしまって、学校へ向う。
室内練習場からミットの音がした。
「御幸くん!?沢村くん??」
鼓膜まで突き抜けてくる大声で、おはようございますと言われた。
御幸くんを見ると困った笑顔を浮かべておはようと言った。