第31章 王谷戦
「やっぱり守備動いてるね」
「だよな…。御幸に伝えてくる。」
ストレートの時は守備が動く事をナベちゃんが見つけ出した。
さり気なくしているから、気づかなくてもおかしくないのに。
ナベちゃんは本当にすごい人だ。
ストレート狙い打ちで逆転に成功した。
見抜かれたと気づいた後、逆手に取られて技と守備位置を変えてきた。
それでも逆転して、リードしてるのはうちだ。
ピンチだけど、チェンジアップを試すのには絶好の機会。
「御幸ならサイン出すと思うよ。」
「そうだよね。私も出すと思う。」
種まきも終わってる。
チェンジアップが決まって4番を三振。5番もセカンドフライに打ち取ってピンチを切り抜けた。
それからの沢村くんは絶好調。少し前までイップスで悩んでいたなんて思えなかった。
「すごい!すごい!」
沢村くんお得意のおーしが、スタンドとコール・アンド・レスポンスになっていた。
いい雰囲気だなー。
安心して見ていられる。
降谷くん、悔しいだろうな…。
御幸くんのことだから、ちゃんとフォローするとは思うけど。
春市くんのホームラン。1年生が大活躍で、焦って怪我悪化しなきゃいいけどな。
少し、心配だ…。
9回、マウンドに上がったのは沢村くん。
センターに抜けそうなあたりを春市くん、倉持くんのコンビプレーでアウト。
「ねぇ、何あれ!!あんなコンビプレーやってのけちゃうのすごくない?」
春市くんのグラブトスからの倉持くん素手でキャッチしてファーストへ。
そのプレーに興奮してナベちゃんの腕をメガホンでポコポコ叩いてしまった。
「わかった、わかったから、落ち着いて。」
完投した背番号18がとても大きく見えた。
試合後、先輩達が声をかけてくれた。
みんな嬉しそう。
次の試合、成孔対仙泉戦をみんなで観戦した。
配球表をつけるためにバックネット裏に座った。
ナベちゃんがビデオカメラを回す。
「真木って子大きいね」
「矢代の倍くらいあるんじゃない?」
ちょっとちょっとさすがにそれはない。そこまでチビじゃない。
11番の登場に球場全体がざわついた。
「うわぁ…えげつない…」
「これはなかなか打てないね」
次の相手は成孔。
あとふたつ。