第28章 帝東戦
堪らず声をかけたけど、いつも通り優しいナベちゃんたち。
もしかして…なんか不満があるのかな…。
「舞ちゃん、ちょっといい?」
「うん、大丈夫だよ。なに?」
「あのさ、ナベの事なんだけど…」
なるほど、御幸くんも気になってたのか…。
「ナベと2人で稲実と鵜久森の偵察行ってくんねぇかな?
舞ちゃんのまとめてくれたデータに不満があるわけじゃねぇんだ」
私も気になってた…私が作るデータはどうしてもバッテリー寄りになってしまうから。
帝東戦の時ナベちゃんが野手のデータをまとめてくれた。それが野手陣に好評だったらしい。
一人じゃできることも限られてるから、誰かと一緒ならもっとチームの役に立てるかもしれない。
「私はいいけど、ナベちゃんはいいの?」
「それなんだよなぁ…これから頼みに行ってみるけど、ナベがなんて言うかな…」
「頼りにされたら嬉しくない人はいないとは思うけど…裏方みたいな仕事だから、ね…」
選手としてベンチに入りたいってもし、思っていたら…ショックかもしれない。
「また、後でくるよ。」
「うん、いってらっしゃい。」
帰ってきた御幸くんは頭を抱えていた。
「嫌だって言われた?」
「ちげぇーよ。俺…先走って余計なこと言っちまったかも」
辞めたいなら止めないって、言われた方は受け取り方によったら本当に去ってしまうかもしれない。
「でも、ホントのホントは辞めてほしくないんでしょ?じゃないと偵察に行ってほしいっていわないと思うんだけど。
御幸くんなりにナベちゃんの居場所作ってるように思うけどなー。」
「ナベがそう取ってくれるとは限らない。」
「居場所って大事なんだよね。モチベーションに繋がるし、自分が必要とされてるって思える所があるのとないのとでは全然違う。」
「もっとちゃんと話聞いてやればよかった…」
ナベちゃんならきっと御幸くんの気持ちもわかってくれると思う。
本人の気持ちは本人にしかわからないから。
今は見守るしかないんだと思う。
本人が答えを出したとき受け止めてあげられればいい。
これだけ人数がいるんだから、全員のモチベーションがあがってる状態の方が難しいよ。