第2章 近づく距離
サキ サイド
「ん…ま、サキならいっか…でも俺、普段誰にもみせないんだよ?」
そういって、かかしは照れ臭そうに髪の毛をガシガシと掻いている。
「ふふ。私になら見せてもいいと思ってくれたんだ?」
なんだか、かかしの言葉がうれしかった。
かかしが、自らみせようとマスクに手をかけたが、私はそれを止めた。
「私が自分で見るから…」
そういってかかしの右目をみつめた。
かかしの右目は少し緊張したかのように私をとらえた。
ゆっくりと私はマスクに手をかけ、下に引き下ろしていく。ゆっくり、ゆっくりと。
月明かりの下に、きれいに整った顔があらわになった。
男らしさのなかに、色気も感じる口元だった。
かかしはそのままわたしを見つめている。
額当てに手をかけて、持ち上げると、閉じられた左目とそこにまっすぐ縦に残る傷跡がはっきり見えた。
どうやら、闇の一部はこれと関係しているのだろう。
そのままゆっくりと右人差し指と中指でなぞった。
「左目…開けて…」
ゆっくりと開けられた左目から、真っ赤にそまったオッドアイが私をとらえた。