第7章 色
かかしサイド
「……ほんとこんな酔っ払いの何がいいんだか」
そういったサキは背中を向けて歩き出す。
サキが行ってしまう___
それは過去の中で感じた
彼女に置いていかれる
目が覚めたらいなくなっている
あの切なく悲しい感覚____
せっかくこうして俺の手の中にかえってきたのに、また俺をおいていくのか?
とっさに彼女の手を引いて抱き寄せる。
あの日、初めてサキと会った後、今日という再会するまでとてつもなく長い年月が経過した。
今引き留めないと、彼女はまたどこかに行ってしまいそうで…
「サキ、俺もう置いていかれるの嫌なんだよ。
どこにも行かないで。今度は俺のそばに…いて?」
情けなくも、ひどく弱気になった自分がそこにいた。
「うん…もう、どこにも行かない。ここにいる」
その言葉に安堵していると、俺の眼にはサキの体からあふれる薄いピンクのオーラが鮮やかに見えた。
なぜ俺にも見えたのかまではわからなかったが、サキ曰く、感情が高ぶっていてコントロールできないと。
漏れ出る色は、だんだんと様々な色をまとっていった。
どの色も、なぜだかサキからの愛情を感じるような暖かみのあるもの。
「すごくきれいな色だけど、抱きしめててこれでしょ?
じゃ、キスしたら一体どーなんの、これ」
なんとなく思ったことを言った途端に
「待って待って!無理っ!」
と、俺の胸にわざと顔を隠す彼女は面白い反面、とても愛しく思えた。
「そんなこと言われたら、待てないでしょ」
そういって彼女を胸元から引きはがし、顎をもって上を向かせる。
何もかもが止まったようなその瞬間、見つめた彼女のその眼の奥に、その先に、彼女の心を見た気がした_____