第7章 色
ダメだ、もはやどんな顔していいかわかんない…
そう思ったらついついかかしに背を向けて歩き出す。
と、すぐに手を引かれ
「サキ、俺もう置いていかれるの嫌なんだよ。
どこにも行かないで。今度は俺のそばに…いて?」
そういってかかしの胸に抱き寄せられた。
どこにも行かないで…か…
術の中で私は何度もかかしを置いていったもんね。
あれは…私も苦しかったな…
そう思うと、かかしがどれだけの思いでそれを言っているのか心苦しくも伝わる。
「うん…もう、どこにも行かない。ここにいる…」
ぎゅっと胸元の服を握りしめ、目を閉じて素直に伝える。
あぁかかしのあったかい匂いがする
心地いいなぁ…
しばらくフワフワとした心地いい時間を堪能し、ゆっくりとかかしを見上げると彼は目を見開いた。
「サキ、色が…」
「ん…ちょっと…‥自分じゃ抑えらんないみたい…」
恥ずかしくなってまた顔をうずめる。
かかしには、私が今感じている幸せ色のオーラが見えているのだろう。
それがかかしに見えるのは、私にとって彼が今特別な存在となり、かつ私の鼓動も情けないほど跳ね上がって興奮しているからだ。
「すごくきれいな色だけど、抱きしめててこれでしょ?
じゃ、キスしたら一体どーなんの、これ」
いたずらにかかしが耳元でいうから、ギョッとして顔を上げて必死で抗議する。
「待って待って!無理っ!」
そう叫んでかかしの胸に無理やり顔を隠す。
今まで自分の術を磨いたり修行や患者のことで恋愛なんてまともにしてこなかったし、ちゃんと人のこと好きになったこともなかった。
思えば特別な感情を持っていたのも、これだけ年月がたっていたにも関わらず、あれ以来かかしだけ。
初対面だったかかしに、今おもえばよく、あんな大胆なことしたなとも思うけど、あればベロベロに酔ってたわけで、今はまだほろ酔い、いや、結構酔いはさめてきている。
情けない、肝心な好きな人の前ではこうも何もできなくなるとは……