第1章 真っ黒
私は昔から人よりも直感が良かったり、人の感情を敏感に感じたり、色やオーラが見える。
この銀髪の男は、直感でわかる、危ないやつではない。
だから隣にいても問題なかった。
でもよくよく見てみると、あーこの人、何かとてつもない暗いものを抱えているんだなってわかった。
左胸のあたりが、真っ黒に渦巻いて見える。
もちろん私にしかみえない。
別に普段そういうのが見えても、わざわざ伝えることなんてしないけど、彼の場合は、なんとなく…口からでてしまった。
「…あなたのここ…真っ黒…」
「…?真っ黒って…なに?どういうこと?」
「ん…よくわかんないけど、あなたなんか抱えきれないような感情をもってるなって…」
「‥…」
「言うつもりなかったんだけど、なんか‥ごめん…わたし、なんかそーいうのわかるんだ。見えるっていうか…」
彼はうつむいていた。
彼の返事が欲しかったわけではないが、ほんと言わなきゃよかった。
余計なお世話だったと思いため息をつく。
私は、また残りの酒を飲みほして、視線を彼から外し星空を見上げた。
銀髪の男は黙ったままだった。